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PMJ

コンポジットに使う樹脂について

樹脂と一口に言っても様々な種類があります。

今回はPMJで通常使ってるポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂の比較を行っていこと思います。

これらの樹脂は各々全く異なった特性を持っており適材適所の選択をしていく必要があります。

↑写真左:エポキシ樹脂(カーボン繊維) 中央:ポリエステル(ガラス) 右:ビニルエステル(ガラス)


今回は各素材が曲げに対してどのような反応を示すのかをテストしていきます。

ヨットで言うところのサイドステー、フォアステー取付部、クルーが乗っているところにこのような力がかかって、船がたわむ、そういったイメージでしょうか。


幅、長さ、厚みがほぼ同じのテストピースを上の写真のように鉄製の定盤にクランプで固定します。このとき定盤の端からピッタリ200mm飛び出すようにします。

そしてその固定したテストピースの外側の辺に沿って上の写真の鉛(1674g)をのせて、乗せる前と乗せたあとで何ミリたわみの差があるか計測していきます。


【ポリエステル T=2mm(2mm厚)】

ポリエステルとガラスのGFRP(Glass Fiber Reinforced Plastic)

厚み2mmのポリエステルといえばちょうどスナイプのデッキくらい、もしくは470のデッキより一回りくらいの厚みです。

思っていたよりグニャ~ンと曲がってちょっとびっくりしました。鉛の重さはもう少し軽くても良かったかな、、、とか思っていました。

重り無し:重り有りのたわみの差は47mmでした。


【ビニルエステル T=2mm】

こちらもポリエステルと同じくビニルエステル樹脂とガラスを使用したGFRP

一般的に高強度、靭性、耐アルカリ性といった特徴があるビニルエステル。高強度ってことはやっぱりポリエステルよりたわみ量は少ないんだろうなぁ、、、

と思ったら意外とポリエステルのときと同じく鉛が滑って落ちちゃいそうなほど曲がっています。なんだか思っていたのとは違う結果になりそうです。

たわみの差は49mm

なんだ?ポリエステルより曲がりが大きいですね。


【エポキシ T=2mm】

エポキシ樹脂とカーボン繊維で作ったCFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastic)

軽くて硬いと言ったらカーボンですよね。

とは言っても同じサイズ、同じ厚みのポリエステル、ビニルエステルのテストピースと比べて特に軽い、と言うわけでは有りません。

その理由はこの通り↑

圧倒的な硬さですね。

これによってもっともっと薄くしても他の素材と遜色ない強度を保つことができて、結果的に軽くなるということです。

たわみの差は10mmです。


【T=3.7mmの場合】

同じサイズのポリエステル、ビニルエステル、エポキシのテストピースで厚みのみ3.7mmに変更したものでも同じテストをしました。

結果は以下の通りです。

T=2mm

T=3.7mm

ポリエステル(ガラス)

47

7

ビニルエステル(ガラス)

49

7.5

エポキシ(カーボン)

10

2.5

2種類の厚みしか比較できていませんが、その中でもポリエステル、ビニルエステルの差はほぼないですが、カーボンを用いたエポキシは桁違いな硬さを誇っています。

ポリエステルとビニルエステルの違いがないなんて言うことはないと思っていろいろ調べていると面白い情報を見つけました。

ビニルエステルについての論文でVE(ビニルエステル)とUP(不飽和ポリエステル)の引張・曲げのストレスストレイン曲線を示した図です。

通常PMJで使用しているポリエステル樹脂は【イソ系UP】になります。

この図を見ると、VE(ビニルエステル)はイソ系UP(ポリエステル)よりも大きな山(=大きな荷重がかかっている)になってから垂直に落ち(=壊れ)ています。

それに対してイソ系UP(ポリエステル)は、VE(ビニルエステル)よりもやや急な角度(=荷重が加わってもあまり変化がない)で上がって行って垂直に落ち(=壊れ)ます。

これはどういうことかというと

・ビニルエステルは壊れるまで大きな荷重に耐えるが、その過程で形状が大きく変わる。⇒ポリエステルに比べて特別強くないが、しなやかで壊れづらい。

・ポリエステルはビニルエステルに比べて小さな荷重で壊れるが、その過程で形状はあまり変わらない。⇒ビニルエステルより少し強いが少ない荷重で壊れやすい。

こういうことです。

ですが実際製品を作るときは壊れない強度を持たせて作るので、この範囲内の荷重で考えるとポリエステルのほうがビニルエステルに対して形状の変化の少ない製品になると言えますね。


まとめ

このテストをするまでは触ってみて【なんとなく硬いなー】とか【んん?なんか柔らかい?!】のような感覚的なことしか分からなかったが、私自身目に見えてたわみが見えるのは非常にわかりやすいのと、ネット上にある情報と照らし合わせてちゃんと正しい情報を得ることができました。やはり、素材はさまざま一長一短があって選定するのにも色々な条件などを加味して行かないといけないなぁと今一度考えさせられますね。

あととても重要なのがエポキシ×カーボンは非常に強い! ポリエステルやビニルエステルでは全く歯が立ちませんね。これからよりカーボン製品を作るモチベーションになりました~。


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1 Comment


Unknown member
Jul 12, 2023

カーボン製品に期待大!

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